有棘細胞がんの情報
皮膚は表面から表皮、真皮、皮下組織の3層から構成されています。有棘細胞がんは、表皮のほとんどを占めるケラチノサイトががん化した腫瘍です。長年にわたり紫外線を浴び続けた顔や手背などの皮膚に、光線角化症(または日光角化症)とよばれる、かさつきのある紅斑ができることがあります(図3)。下口唇にも同じような病変ができることがあり、日光口唇炎と呼ばれます。光線角化症と日光口唇炎はごく早期の有棘細胞がんで、がん細胞は表皮のみにとどまります(表皮内がん)。また原因が特定できない表皮内がんをボーエン病とよびます。いずれも進行すると深部に浸潤し、角化を伴う腫瘤や潰瘍を形成し悪臭を伴うようになり(図4)、リンパ節転移や遠隔転移を起こすことがあります。有棘細胞がんの原因として最も多いのは紫外線の長期曝露ですが、その他に、やけどのあと(熱傷瘢痕)、放射線による皮膚炎、慢性の炎症(骨髄炎、褥瘡、膿皮症など)、パピローマウイルスの感染、タールの長期曝露、慢性ヒ素中毒など、さまざまな原因で有棘細胞がんが発生することがあります。昔の傷あとが盛り上がってきた、治りにくい潰瘍ができた、など、疑わしい病変では生検による組織の確認と、これまでの生活歴の把握が重要です。
光線角化症 有棘細胞がん
(図3) (図4)