診療方針
当科では、がんに罹った患者さんやそのご家族の心のケアを行うことによって、不安や気分の落ち込みなどを和らげ、安定した心の状態を維持し、自分らしい生活をしながらがん治療を受けていくお手伝いをさせていただきます。当科は、医師2名と心理療法士2名、計4名で診療を行っています。
サイコオンコロジー(精神腫瘍学)は、がん医療における心の医学、心の緩和ケアともいわれます。
がん患者の約半数に、通常の生活が送れないほどの不安や気分の落ち込みなどがみられたという報告もあります。それだけ、がんを抱えることは大変なストレスです。
当科では、がんによるさまざまなストレスにより生ずる患者さんやご家族の精神的反応(心の痛み)に、的確に対応して心の支えとなり、生活の質、生き方の質を高め、がんと自分らしく上手に取り組めるように援助いたします。心に寄り添うやさしい医療を心がけ、心のケア・心のサポートを行います。
治療としては、カウンセリングやリラクセーションなどに加え、適切な薬剤の併用を行う場合もあります。
ご家族の心のケアも積極的に行っております。お気軽にご相談ください。
診療内容
がんは体の病気ですが、心にも大きな負担がかかるため心の負担を軽くし、安定した心の状態を維持することが大切です。体の痛みへのケアが大切なように、心の痛みにもケアが必要です。当科では、がん闘病の中で生じてくる適応障害やうつ病、せん妄などといった精神的反応を中心に扱っています。患者さんやご家族の精神状態が日常生活に支障をきたしているような場合、あるいはこんな状態でも診てもらえるのかと迷われるケースでもお気軽にご相談ください。悩んでいるのはあなただけではありません。
よくある精神的反応
うつ病 |
気分が落ち込む、以前楽しんでいたことが楽しくない、興味がわかない、食欲が出ない、眠れない、何かしようとしても気力が出ない、物事に集中できない、自分を責めてしまう、死んでしまいたいという気持ちになる、などの症状が2週間以上続く場合。 |
適応障害 |
がんになった衝撃や再発への不安あるいはがんにより変化した体の状態や生活についていけず、仕事や家事といった日常生活に支障が出るほどの不安や気分の落ち込みなどの、不安定な情緒状態が2週間以上続く場合。 |
せん妄 |
身体的な状況が悪化したときなど、何らかの原因による一時的な脳の機能低下に基づく意識障害で起こる精神的反応で、夢うつつのような状態になる。軽度ないし中等度の意識混濁に興奮や幻覚などの症状を伴います。 |
その他、認知症や統合失調症などの精神科疾患、パーソナリティ障害や摂食障害など、がん治療と共にどのように付き合っていけばいいのか心配な場合は、お気軽にご相談ください。
緩和ケアチームとの連携
がんの闘病中には、精神症状(心の痛み)だけでなく和らげるのが難しい身体症状(体の痛みなど)もみられることがあります。そのような場合、少しでも症状を和らげ自分らしい生活を過ごせるように、主治医と協力して専門的立場からお手伝いをさせていただく「緩和ケアチーム」というのがあります。
緩和ケアは、体や心の痛みの軽減と生活の質を向上させる目的で、がんの診断時から治療と並行して行います。終末期に限って行うものではありません。サイコオンコロジー科も緩和治療科とともに心と体の応援団として精神的身体的苦痛の緩和に努めています。
緩和ケアチームは、医師、看護師、薬剤師、理学療法士、心理療法士、ソーシャルワーカー、栄養士などの多職種により構成されています。緩和ケアチームへご相談したい場合は、主治医へご相談し紹介状を書いてもらい緩和ケア外来を受診できます。詳しくは、緩和ケアチームのご案内をご覧ください。
チャイルドサポート
がん患者さんの中には幼い子どもを抱えている方がいます。子どもたちは、他の家族と同様に患者さんの病気を心配しています。子どもたちへの病気の説明、子どもの反応や対応、気がかりなことがあれば心理療法士へご相談ください。
グリーフケア(遺族の悲嘆のケア)
大切な方を亡くされたとき、人は悲しみという感情だけでなく、さまざまな心と体の変化を経験します。多くの変化は一時的にみられる自然なものですが、長い間続くときや、程度が強くて不安なときはいつでもご相談ください。
患者会やピアサポーターなどとの連携
必要に応じて患者会に参加し、患者会へのサポートを行っています。
また、院内の患者サロンにおいて、患者さんやご家族らの不安や悩みを傾聴し支援するピアサポーター(がん体験者の仲間)などとも連携しています。