診療方針
腫瘍循環器科とは、がんと心血管疾患の両者が重なりあった領域を扱う診療科です。具体的には心血管疾患を併存したがん患者さんや、がんの治療中や治療後に心血管疾患が出現したがん患者さんの診療を行います。
がんに対する治療の進歩はめざましく、がん患者さんの予後は大幅に改善しがん治療を受ける期間が長期化しています。さらにがん患者さんの高齢化や生活習慣の変化により高血圧症や糖尿病、脂質異常症など心血管危険因子を抱え、がん診療開始時にすでに心血管疾患を合併している患者さんの割合も増加しています。がんやがん治療が心血管系に及ぼす影響は、がん治療関連心機能障害や心不全、冠動脈疾患、不整脈、がん関連血栓症(動脈・静脈)、高血圧症など多岐にわたります。これら心血管合併症のために有効ながん治療を中止・中断することは、がん患者さんの生命予後や生活の質に関わります。そこで腫瘍の専門と心臓の専門が連携することで、がんの治療を可能な限り継続し完遂できるようにサポートすることが腫瘍循環器学の目標です。
当院では2020年2月から循環器科を腫瘍循環器科と改め、心血管の専門家としてがん患者さんの治療に関わっています。手術や化学療法、放射線療法の前に、患者さんの心血管の状態や危険性を評価し、安全に治療を受けられるように対応します。がんの治療中や治療後に出現した心血管疾患の診断と治療を行います。丁寧な診察をこころがけ、心電図や超音波検査など当院で可能な検査と組み合わせることで、的確に診断し適切な治療を行えるように努めています。なお当院では心臓カテーテル検査や心臓カテーテル治療、ペースメーカ植え込み術などは行っておりませんが、このような検査や治療が必要な場合には、速やかに近隣の総合病院に紹介いたします。
九州がんセンターの患者さんが安心してがんの治療を受けられるようにサポートしていきたいと思います。