理念と方針
更新日:2024年6月28日
独立行政法人国立病院機構九州がんセンター(どくりつぎょうせいほうじんこくりつびょういんきこうきゅうしゅうがんセンター)(英語名称:National Hospital Organization Kyushu Cancer Center)は、福岡県福岡市南区にある医療機関です。独立行政法人国立病院機構が運営するがん専門病院であり、がん政策医療ネットワークの基幹医療施設です。福岡県の都道府県がん診療連携拠点病院に指定されています。
基本理念
私たちは「病む人の気持ちを」、そして「家族の気持ちを」尊重し、温かく、思いやりのある、最良のがん医療をめざします。
基本方針
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患者さんの人権尊重
患者さんの知る権利と自由意志などを保障し尊重いたします。
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診療の充実と強化
九州におけるがん医療の基幹施設として、診断、治療の向上と先進的ながん医療をめざします。
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臨床研究の推進
基礎および臨床研究を積極的に推進し、がん医療の発展に貢献します。
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教育、研究の充実
がんに関する教育、研修機能を充実させ、医療従事者の質の向上を図り、将来のがん医療を担う人材を育成します。
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情報の収集と発信
国内外の最新のがんについての知見や情報を収集し、メディアやソーシャルネットワーク等を活用して、適正な医療情報を提供します。
患者さんの権利と責務
患者さんは、人としての尊厳を尊重されながら良質な医療を受ける権利があります。地域の患者さんの命と健康を守ることを使命とする九州がんセンターは、<私たちは、「病む人の気持ちを」そして「家族の気持ちを」尊重し、温かく思いやりのある最良のがん医療をめざします>を基本理念とし、次のような「患者さんの権利と責務」を定めます。
当院は、これを遵守し、患者さんの医療への主体的な参加を支援いたします。
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患者さんの誰もが、個人を尊重され、平等で安心な最善の医療を受ける権利があります。
患者さんは、社会的な地位、疾病の種類、国籍、宗教などにより差別されることなく、誰でも適切な医学水準に基づいた安全かつ効率的な医療を受ける権利を持っています。当院の職員は、この権利を尊重し、患者さんに対して常に公平であるとともに、安全で高度な医療の提供と医療の質の向上を目指します。
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病気や診療および治療内容について納得できる十分な説明と情報を受ける権利があります。
医療に関する説明や情報の提供は、医療提供者側からの一方的なものであってはなりません。医療提供者が患者さんから自覚症状や既往歴などの情報提供を受けたり、患者さんの質問に理解しやすい言葉や方法で適切に答えたりするなど、患者さんの立場に立った良好なコミュニケーションを心がけ、患者さんの理解を助け、納得が得られるように努めていきます。
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納得のいく医療を受けるため、医療に関する説明などを受けたときは、十分に理解できるまで質問し確認できる権利があります。
患者さんが治療などに関する説明や情報提供を理解し納得のいく医療を受けて頂くために、そして治療方法などを自分の意思で選択して頂くためにも、分からないことがあれば何度でも医療提供者に質問することができます。
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治療法など自ら自由に選択できる権利があります。
患者さんが治療方法などを自らの意思で選択する権利を保障するためには、単に医療情報を提供するだけではなく、適切な医学水準の知識や経験を持つ医療提供者が、患者さんの利益を考えながら支援していくことが必要です。当院の職員は患者さんの意思を尊重します。
また、他施設の医師の意見(セカンド・オピニオン)を求める場合もその意見を尊重します。
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診療における個人情報が守られ、プライバシーが守られる権利があります。
病気に関わる患者さんの私的な情報が取り扱われ、特別な環境のもとで私的な生活が営まれる病院という場所であるからこそ、患者さんのプライバシーは十分に配慮されなければなりません。当院では、患者さんの個人情報やプライバシーを厳正に守っていきます。
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患者さん自身の診療録の開示を求める権利があります。
患者さんが診療記録を見るだけでは、その内容を把握することは難しい場合が多いため、診療記録の開示を求める権利には、診療記録の閲覧、複写はもとより、内容の説明を受ける権利も含まれます。
当院では、このような考え方に基づき独自の制度を設け診療録の開示に努めています。
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受ける医療に関し、目的や危険性などについて十分な情報提供を受けた上で、その医療を受けるかどうかを決める権利と、何らの不利益を受けることなくいつでもその医療を拒否できる権利があります。
臨床試験や治験(新たな薬や治療方法の認可を受けるための研究)を含め、患者さんは、その目的、危険性などについて十分な情報提供を受け、医療を受けるかどうかを判断する権利があります。また、これらの医療は患者さんの同意なしに行われることはなく、たとえ同意しても何らの不利益を受けることなく同意を撤回することができます。
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全ての患者さんが平等に適切な医療を受けられるよう、他の患者さんや病院職員に支障を与えないよう配慮する責務があります。
病院では、職員が数多くの患者さんに様々な医療を提供しています。そのため、患者さんは通常の社会生活にはない制約を受けざるを得ないこともあります。このことを十分にご理解いただき、適切な医療の提供にご協力をお願いします。
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良質な医療を提供するために、医師をはじめとする医療提供者に対し、患者さん自身の健康に関する情報をできるだけ正確に提供する責務があります。
医療提供者が患者さんの状態や治療などについて的確な判断を行うため、家族歴、既往歴、アレルギーの有無など、患者さん自身の健康に関する情報をできるだけ正確に医療提供者に伝えてください。
九州がんセンターのこども憲章
わたしたちの病院は、あなたとご家族の皆さんに次の約束をします。
- いつでも、ひとりの人として大切にされます。
- 家族もいっしょに治療に参加することができます。
- 自分の気持ちや考えを家族や私たちへ伝えることができます。
- わかりやすい言葉で説明を受けた上で、治療に参加することができます。
- 入院しているときも、家族とできるだけいっしょにすごすことができます。
- 入院中でも、そのときのあなたに合わせて遊びや学校の授業を受けることができます。
- ほかの人に知られたくないひみつは、いつも守られます。
- 退院したあとも続けて治療を受けることができます。
- 治療がうまく行えるように、病院の決まりを守りましょう。
解説
こどもたちは、ひとりの人として大切にされ、その子の最善の利益としてより良い医療を受ける権利があります。病気をなおすために、ご家族と私たち医療者が力をあわせていくことが大切です。九州がんセンターは、こどもさんとご家族の気持ちを大切にして「こども憲章」を守っていきます。
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いつでも、ひとりの人として大切にされます。
いつでも、一人の人として尊重され、もっている権利が守られます。
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家族もいっしょに治療に参加することができます。
家族もいっしょに治療に参加できるように、私たち医療者は配慮します。
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自分の気持ちや考えを家族や私たちへ伝えることができます。
自分の考えや思いについて自由に表現できるように配慮します。私たち医療者に伝えてください。私たちはその考えや思いを尊重し、いっしょに考えて、治療していきたいと思っています。
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わかりやすい言葉で説明を受けた上で、治療に参加することができます。
こどもたちや家族は、治療をうける前(意思決定場面)に十分な説明を受けた上で、治療に参加することができます。
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入院しているときも、家族とできるだけいっしょにすごすことができます。
病院にいても、家族など安心できる人といっしょに過ごすことや付き添ってもらうことができるように、私たち医療者は配慮します。
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入院中でも、そのときのあなたに合わせて遊びや学校の授業を受けることができます。
入院中でも、こどもたちの成長発達に合わせたレクリエーションや教育を受けることができます。
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ほかの人に知られたくないひみつは、いつも守られます。
こどもたちや家族の個人情報やプライバシーは、いつも尊重されて、守られます。
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退院したあとも続けて治療を受けることができます。
退院後もケアを受けることができ、大きくなったときは他の科で診てもらうこと(成人診療科への移行)もできます。
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治療がうまく行えるように、病院の決まりを守りましょう。
病院のきまりを守ってもらうことが安全に安心した診療を受けるために必要です。
2022年3月3日
* 輸血を拒否する患者さんの権利の尊重
輸血を拒否する患者における、診療上のリスクを伴う自己選択についての当センターの方針:
- 患者の生命を最大限に重視する基本的立場を堅持するとともに、無輸血の自己選択を尊重する。
- 輸血をしなければ診療が難しいと判断したケースにおいて、必要な場合は輸血をすることを事前に説明し、患者が当センターで診療を受けるかどうかの自己決定権を尊重する。
- 輸血の可能性が低い診療に関して、輸血以外の処置で診療が可能と想定した場合のみ、無輸血での診療の選択を病院として判断し受け入れる。その後に、輸血が必要な事態が発生した場合は患者の意思決定を尊重する。
NKCCマニュアル 第5版、2022年2月3日改訂
輸血療法マニュアル、2022年6月28日改訂
パートナーシップ
患者さんとのより良いパートナーシップを築くために
九州がんセンターでは、『病む人の気持ちを』そして家族の気持ちを尊重し、温かく、思いやりのある最良のがん医療をめざすことを基本理念としています。最良の医療を実現するには、患者さんだけの思いや医療者だけの考え、どちらか一方だけでは最良の医療は成立しません。患者さんと医療者が相互信頼を深め、お互いが尊重し合う精神とお互いが意思決定に参加すること、すなわち患者さんと医療者とのより良いパートナーシップ(対等な協力関係)があって、初めて最良の医療が実現できるものです。
患者さんとのより良いパートナーシップを築くために、私たちは常に患者さんやご家族の声に耳を傾けるよう努めて参ります。問いかけや言葉かけなど、患者さんと医療者との対話がまず1歩です。ご不明な点、お困り事、どのような些細なことでも構いませんので、担当者にお声をかけて下さい。
当院では以下のような取り組みを行っておりますが、より良いパートナーシップを築き、最良のがん医療を実現するには、患者さんに積極的に医療へ参加して頂かねばなりません。はっきりとした意思表示や守っていただかねばならない事もありますので、ご協力をお願いします。
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患者さんの知る権利と自由意志を尊重したインフォームド・コンセント
患者さんの知る権利と自由意志を保障、尊重し、わかりやすい説明を行って十分理解し、納得していただき、同意していただくこと(インフォームド・コンセント)が、大変重要です。
- 文書で、わかりやすく、懇切丁寧な説明を心掛けています。
- 治療方針に関しては、ご本人の意見をよく聞いて、一緒に意思決定しています。また、別の病院や医師へのセカンドオピニオンを保証し、ご本人の自由意志による同意を支援していますので、ご遠慮なくお知らせ下さい。
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安全な医療の確保と生活支援
患者さんとのより良いパートナーシップを築くため、また安全な医療を提供するために、患者さんにも積極的に医療へ参加していただき、私どもと一緒に、より良い医療を築いていただきたいと願っていますので、ご協力をお願いします。
- 名前、生年月日、アレルギー歴などの確認には、ご協力をお願いします。
- 安全な入院生活のために患者さんやご家族にも参加をお願いします。(転倒予防のための評価を行い、転倒防止に努めています。)
- 外来の採血時には、お名前をフルネームで応えていただき確認しています。
- 注射時には、注射箋を一緒に見てもらい、ご本人を確認の上で実施しています。
- がん化学療法時には、副作用の症状を把握し、化学療法が安全、確実に行えるように、ご本人に日誌を記載していただいています。
- がん性疼痛をご自分でコントロールできるように、ご支援するためにフェイススケール(痛みの程度を表す表情の顔絵)の記入を勧めています。
- ストマの自己管理は実際にご自分で行っていただくよう指導しています。
- 生活習慣病関係のセルフコントロールを支援しています。
- 患者さんやご家族にご協力・ご理解していただきたいことがあります。
- 医療安全を確保するための規則や他の患者さんとの共同生活を維持するための約束事をお守り下さい。
- 安全な医療を提供する努力はしておりますが、医療には絶対ということはありません。想定外の事態がおこる可能性があることをご埋解下さい。
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患者参加型の看護計画の実施
患者さんご自身が健康上の問題を解決できるように支援いたします。そのためにご本人やご家族の意見を聴き、ご自身にもケアプラン立案に参画していただき、ご本人やご家族の意向にそった看護を実施いたします。
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クリティカルパスの積極的な導入
治療開始前に、わかりやすい治療計画、予定表(クリティカルパス)をお渡しして、治療経過を理解していただきなから治療・看護を行っています。
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在宅支援
在宅酸素療法、在宅中心静脈栄養など在宅療養が行えるよう体制を整えています。点滴の処置や、器具の取り扱いなどについて、ご本人やご家族が安全、確実に実施できるまで練習を指導し、安心して在宅療養ができるように支援しています。
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ご意見箱の設置
随所にご意見箱を設置しております。ご自由にご意見をお寄せ下さい。ご意見に対するご返事は、個別に行ったり、掲示するなど、適切に対応しています。
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患者さんやご家族のためのがんの情報コーナー設置
院内にがんの情報コーナーを設置して、がんに関する書物を備えています。インターネットが可能なパソコンも備えており、世界中のがん情報の入手が可能です。