診療方針
血液・細胞治療科は、悪性リンパ腫や白血病、多発性骨髄腫などの血液腫瘍を中心に、貧血や血小板減少といった日常診療でよく遭遇する疾患まで、最新の治療を専門的立場から提供しています(血液専門医5名、総合内科専門医3名、造血細胞移植認定医2名、再生医療認定医1名)。血液腫瘍の治療の中心は抗がん剤治療ですが、多剤併用化学療法はもちろん、放射線療法、自家・同種造血細胞移植を含め、適応に応じたあらゆる治療法を選択することが可能です。
血液腫瘍は治療が長期にわたる場合がありますが、医師、看護師、薬剤師のみならず、リハビリ部門や心理療法士、ソーシャルワーカー、栄養士などが常に意見交換をおこない(チーム医療)、患者さんの希望を尊重し、安心した療養生活が送られるように心掛けています。
当科の特徴として、日本最大の白血病(JALSG)およびリンパ腫(JCOG)研究グループのメンバーに属し、つねに最先端の診断と治療を目指しています。また、国内でできるだけ早く有効な新薬が使えるよう、臨床治験にも数多く参加し、治験を希望される患者さんの気持ちに極力応えられるように努めています。最近では、がん免疫療法の一環として細胞療法*を取り入れ、副作用が少なく、安全で健康寿命を延ばす治療法の開発を目指しています。中でも現在開発中の成人T細胞白血病・リンパ腫(ATL)に対する樹状細胞ワクチン療法は、最も信頼性の高い「治験」という形で国内に先駆けて取り組んでおり、2021年からは保険承認を目指した第2相医師主導治験を実施しています。
*細胞療法は、ヒトの細胞や、組織を体外で加工して治療に用いる治療法の総称です。
診療内容
造血器腫瘍(白血病・骨髄異形成症候群・悪性リンパ腫・多発性骨髄腫・成人T細胞白血病/リンパ腫・骨髄増殖性疾患など) |
再生不良性貧血(特発性造血障害;厚生労働省特定疾患) |
特発性血小板減少性紫斑病(特発性造血障害;厚生労働省特定疾患) |
ATLの治療用ワクチンの医師主導治験 |
HTLV-1(エイチティエルブイワン)キャリア外来 |
血液腫瘍は希少疾患であり、人口10万人あたり数人といった発症頻度ですが、その内容は、白血病(急性・慢性、骨髄性・リンパ性)、悪性リンパ腫(図1)、多発性骨髄腫、骨髄異形成症候群、骨髄増殖性腫瘍と多岐にわたります。当院では入院37床のベッド数で年間約150例の新規血液疾患患者の診療にあたっています(表1)。近年、血液腫瘍に対する治療の進歩は目覚ましく、がん細胞を狙い撃ちにする分子標的治療、難治性血液腫瘍に対する造血幹細胞移植法の開発が進む一方、患者さんの体内の免疫力を生かした抗体療法、また抗がん剤の副作用を軽減する支持療法の発達などにより、患者さんの生命予後は大幅に改善してきています。たとえば、進行が早い悪性リンパ腫のひとつである、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(月単位で進行する腫瘍)でも、標準治療が施行できれば、およそ2/3の患者で長期生存(一部は治癒)が望めるようになりました(図2)。
ATLは、HTLV-1ウイルス感染者(HTLV-1キャリア)に発症する血液腫瘍ですが、現在樹状細胞ワクチン療法の第2相治験を実施中です(日本医療研究開発機構(AMED)「革新的がん医療実用化研究事業」:https://jrct.niph.go.jp/latest-detail/jRCT2073210013*)。

⇐ 樹状細胞ワクチン療法の第2相治験のリーフレットはこちらから
当院では、外来化学療法室に隣接して細胞製品の調製室(高度無菌調製室)を設置し、安心して治療細胞療法を受けて頂く体制が整っています。HTLV-1キャリアさんの外来診療は、感染予防のための教育、体調管理や健康相談を受け付けています。
*外部サイトにリンクしています。
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5階西 無菌室 |
九州がんセンター 高度無菌調製室 |
診療実績
表1
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2016年 |
2017年 |
2018年 |
2019年 |
2020年 |
悪性リンパ腫 |
113 |
103 |
92 |
100 |
99 |
(うちATL) |
7 |
11 |
8 |
7 |
8 |
白血病 |
26 |
40 |
34 |
37 |
21 |
(うちMDS) |
6 |
17 |
9 |
16 |
10 |
多発性骨髄腫 |
7 |
7 |
10 |
9 |
8 |
キャリア外来
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2021年度 |
2020年度 |
2019年度 |
2018年度 |
内訳 |
2021年度 |
2020年度 |
2019年度 |
2018年度 |
初診件数 |
12 |
14 |
9 |
8 |
日赤からの紹介件数(献血判明者) |
7 |
11 |
3 |
0 |
周産期施設からの紹介件数 |
0 |
1 |
0 |
1 |
保健所からの紹介件数 |
0 |
0 |
0 |
0 |
他医療機関からの紹介件数 |
5 |
0 |
3 |
5 |
紹介なし |
0 |
2 |
3 |
2 |
保健所からの(電話などの相談件数) |
0 |
0 |
0 |
0 |
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相談センター(院内)対応件数 |
36 |
24 |
17 |
16 |
再診件数 |
285 |
319 |
251 |
177 |
近隣施設研修実施回数 |
0 |
0 |
0 |
2 |


(図1)悪性リンパ腫患者の内訳(2016年~2020年)
治療成績
(図2)びまん性大細胞型B細胞リンパ腫の生存率

治療期間目安
患者さんの病状や年齢、社会的背景に合わせて、治療法や治療強度を選択しますので、その都度担当医が説明させていただきます。
実施中の治験・臨床試験
- 当科で実施中の治験はこちらをご覧ください。
- 当科で実施中の臨床研究はこちらをご覧ください。
企業治験実施状況

担当医表
血液・細胞治療科 外来
受付時間 |
8時30分~11時 |
外来診察室 |
血液・細胞治療科(Aブロック) |
初診(初めて)の方 |
代表番号
HTLV-1キャリア外来 木曜日(9時~12時)です。
|
TEL 092-541-3231 |
再診(再来)の方 |
予約センター |
TEL 092-541-3262 |
※受診に関するお問い合わせについては上記にご連絡をお願いいたします。
※医師の学会出張や業務の都合による急な休診・代診が発生する場合がございます。
※初診時は絶食不要です。来院後は基本的に水分(水やお茶)のみ摂取可としていますが、食事をとりたい場合には必ずスタッフに確認をお願いいたします。