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がんゲノム医療

更新日:2022年8月9日

がんゲノム医療について

1.がんゲノム医療とは

1)DNA、遺伝子、ゲノムとがん

わたくしたちの身体はすべて細胞という構成単位が数十兆もの数集まってできています。この細胞ががん細胞に変化(がん化)することで、本来の臓器や組織での振る舞いから逸脱して増殖する病態ががんです。細胞の大きな特徴は、そのひとつひとつが身体全体の設計情報をもっていることです。この設計情報は遺伝情報とも呼ばれ、細胞の中の核と呼ばれる部分に含まれるDNAという物質によって運ばれています。DNAには情報の濃縮された部分と希薄な部分とがあり、前者は細胞の活動において活躍する部品(タンパク質)の構造を決める図面となっています。この図面が遺伝子です。遺伝子は、ヒトの場合、約21,000個、DNA上に存在します。ゲノムとは、このような生物種がもつ遺伝子のフルセットのことを指します。細胞ががん化する上では、このDNA、遺伝子にさまざまな変化が生じていることが原因と考えられていますが、これらの変化は同時に、がんの性質を決める要因にもなっていて、がんの診断や治療の判断の決め手となるバイオマーカーとして利用されるようになりました。

2)パネル遺伝子解析とがん診療

このように、近年のがん医療では、がん細胞の遺伝子の状態を解析し、その結果によって、より詳しく診断したり、治療方針を決定したりすることが行われるようになりました。 もっとも、その際に解析される遺伝子の数はこれまで、1回に1個、もしくは2個程度でした。これは、DNAの情報を解読する機器(シーケンサー)の技術的限界によるものでした。ところが近年、この技術の長足の進歩により、高速シーケンサー1)が出現し、一度に21,000個すべての遺伝子を解析することも可能になってきました。その結果、さまざまな診療領域で、数十から100を超える遺伝子を一度に解析する検査が登場してきました。このような検査の活用により、1-2個の遺伝子の解析では認識されていなかった遺伝子の所見が明らかになることで、それまで想定されていなかった診断や治療に結びつく事例も増えてきました。また、これまで遺伝子を解析されていなかった方は、効率よく遺伝子の所見を明らかにし、それに従って診断や治療方針を決定することも可能になってきました。このように、高速シーケンサーの活用による多(パネル)遺伝子解析により、バイオマーカーの状態を同時に複数同定し、より効率的な診断・治療につなげる医療をゲノム医療と呼んでいます。1遺伝子解析の時代から、多(パネル)遺伝子解析の時代へのシフトが、がん診療の戦略や効率を大きく変えるものと期待されています。
1)次世代型シーケンサー、SBS法シーケンサーとも呼ばれています。

 

2.がんパネル遺伝子検査とは

がん診療を目的としたパネル遺伝子解析検査をがんパネル遺伝子検査と呼んでいます。がんパネル遺伝子検査は現在、国内外の多くの医療機関で、先進的な臨床検査として行われるようになっていますが、上記しましたような利点がある一方、これまでの1遺伝子解析の時代には存在しなかった問題も生じており、注意が必要です。

1)がんパネル遺伝子検査の検体と方法

(1)検査に必要な検体

がんパネル遺伝子検査では、がん組織からDNAやRNA2)を抽出し、用います。そのため、組織病理学的に診断されたがん細胞を十分量含む組織サンプルを準備する必要があります。これには、すでに実施された外科手術などの際に切除された臓器標本からがん組織を利用する方法と生検や外科的処置などによりがん組織を新たに採取して利用する方法とがあります。
2) RNAは、核の外でタンパク質を合成するためにつくられるDNA情報の「写し」の役割を果たす分子です。

(2)検査の方法

がん組織より得られたDNAやRNAをシーケンサーにより解析します。がんパネル遺伝子検査は現在、さまざまな検査商品が開発されていますが、その解析の内容は大別して、遺伝子の配列変化3)遺伝子のコピー数の変化、通常では存在しない異常な構造をもった遺伝子4) の有無を主に解析するものです。対象となる遺伝子(パネル)は、50 - 300個程度のものが一般的です。解析対象も用いる検査商品によって大きく異なり、多くの遺伝子の中で限られた遺伝子のみが解析対象となっています。当然解析対象となっていない遺伝子の情報は得ることはできませんので、注意が必要です。
3) DNAにはA(アデニン)、G(グアニン)、T(チミン)、C(シトシン)と呼ばれる化学物質から成る配列情報が刻まれています。がんでは、この並び配列が変化していることがあります。
4) がんでは、2つの遺伝子の前半と後半とがつながって、新しい遺伝子が形成されることがあり、これを融合遺伝子と呼んでいます。

2)がんパネル遺伝子検査のメリットとデメリット

(1)検査のメリット

上記の 1-3 の異常が特定の遺伝子にみつかることで、疾患がより詳しく診断されたり、特定の治療方法が有効であることがわかったりするかもしれません。

(2)検査のデメリット

検査を行っても、解析対象となった遺伝子に特段の所見が得られない場合も少なくありません。その場合は、あなたの診療に検査の結果を生かすことはできません。また、遺伝子に所見が得られても治療に結びつかないことも少なくありません。これは、現時点で意義不明な所見が得られる場合や、該当する治療方法が現在国内で入手不可能な場合、健康保険診療の適応にならない場合もあるからです。さらに、一度に多くの遺伝子を解析することで、それまで予想もしていなかった遺伝子の所見が明らかになり、現在の診断が変更される場合、新たな疾患の存在が明らかになる場合もあります。特に、数%の確率で、遺伝性の疾患が診断されることがあります。これは、検査で使用されるパネルの中に、遺伝性のがん疾患の原因となる遺伝子が含まれていることがあるからです。この場合、得られた遺伝子の所見はがん細胞のみならず、あなたの全身の細胞に存在し、親からの遺伝によって引き継いだことが明らかになることがあります。遺伝性のがん疾患と診断された場合、通常の個人より高い発がんリスクをもつことを意味します。また、遺伝により、子供など家族とも疾患を共有している可能性がありますので、さまざまな対応が必要になります。

がんパネル遺伝子検査を受けることを検討する際には、上記の事柄をよく理解した上で、がんパネル遺伝子検査が現在のあなたの診断や治療にとって有効であるかどうか、よく主治医と相談して、検査を実施するかどうか判断することが大切です。

九がんゲノム医療システム

九州がんセンターでは、がんパネル遺伝子検査を実施する体制を整えています。がんパネル検査を実施する上では、 

  1. がん組織の保存・管理
  2. 遺伝情報(DNA情報)の記録・管理
  3. データの分析に必要な専門家集団
  4. 遺伝医療の提供

 などが必要とされていますが、当院はいずれのシステムも整っており、厚生労働省による「がんゲノム医療中核拠点病院」制度では、「がんゲノム医療拠点病院」に指定されています。 


1.九がんゲノム医療システムの特徴
当院のがんゲノム医療システムは、以下のような特徴をもつシステムです。

  1. 外科手術などの際に切除されたがん組織から得られたDNA、RNAをバンキングするバイオバンク(「腫瘍バンク」)が整備されおり、迅速かつ低コストに検査が実施できる5)
    5) 検査によっては、バイオバンクの DNA 、 RNA は使用されず、がん組織自体や血液を使用する場合があります 。
  2. 研究部門(「臨床研究センター」)をもち、遺伝情報の取り扱い、記録・管理のシステム、データを分析可能な専門家集団を有している。
  3. 遺伝医療部門(「遺伝カウンセリング室」、「がん遺伝外来」)をもち、遺伝カウンセリングに専門的技術と経験を有する職員を配置している。
  4. また、これらの職員が「遺伝・ゲノムコーディネーター」として、がんパネル遺伝子検査を受ける患者と医療スタッフとの間に介在し、検査が円滑に実施されるよう調整する。
  5. 院内で実施されるがん関連の臨床試験、治験課題数は国内でもトップクラスに多く、国内で初となる課題も少なくないため、検査結果を受けて、臨床試験、治験に参加できる可能性がある。

 

2.九がんゲノム医療システムを利用するには
1)「がんゲノム外来」の受付

当院でがんパネル遺伝子検査を受けることを検討される方は、以下の連絡先までご連絡ください。

現在、当院で診療を受けていない方は、以下の連絡先にご本人が直接お電話ください。

〒811-1395 福岡市南区野多目3-1-1
独立行政法人国立病院機構九州がんセンター
がんゲノム受付
がん相談支援センター内(担当: 井上)
TEL: 092-541-3231(代表)

現在、当院で診療を受けている方は、主治医にまずご相談ください。


2)「がんゲノム外来」受診の前に

がんゲノム外来への受診を予約された方は、受診の前に以下の同意説明文書をご一読ください。説明文書の内容にご理解とご同意が得られない場合、検査を実施することができません。


「がん診療を目的とした多(パネル)遺伝子解析検査に関する説明書v4.0」 
(がんパネル遺伝子検査同意説明文書) 

(がんパネル遺伝子検査同意説明文書)

 

当院のがんパネル遺伝子検査で使用される検査商品は以下の通りです。

A. 自費診療(10割負担)
a) ThermoFisher/illumina Focus+BRCA

B. 健康保険診療6)
6) 病状によっては検査を受けられない場合があります。
a) シスメックス OncoguideTM
b) 中外製薬 FoundationOne® (FoundationOne® Liquid 含む)

費用については、以下の欄をご覧ください。米国Thermo Fisher社が提供するFocus Assayの遺伝子パネルは以下よりパネルは以下よりダウンロードして閲覧できます。解析対象となっていない遺伝子の情報は得ることはできませんので、特定の遺伝子に注目している場合は、事前に各パネルにその遺伝子が含まれているかどうかお問合せください。

 

「九がんゲノム医療システム自費検査遺伝子パネルv2.0」
(パネルシート)

(パネルシート)

 

3)「がんゲノム外来」

(1)受診方法

「がんゲノム外来」への受診方法は、「がんゲノム外来」の予約時に、担当者がご説明します。

(2)診療を担当する医師

当院各診療科の「がんゲノム担当医」が診療を担当します。

現在、当院で診療を受けている方は、現在の主治医が診療を担当します。

(3)診療

「がんゲノム外来」では、がんパネル遺伝子検査の実施から結果の説明までを行います。診療は通常2回の受診を予定しており、以下の各ステップから成ります。

I.第1回外来
 i)現在の主治医から「がんゲノム担当医」への診療情報の提供
ii)現在の主治医から「がんゲノム担当医」へのがん組織サンプルの提供
iii)「がんゲノム外来」受診と診察
iv)がんパネル遺伝子検査同意説明文書の内容の確認と同意書への署名
 v)検査のオーダー

II.再来(採血がある場合のみ)
 i)採血

III.第2回外来
vi)検査結果の説明
vii)「がんゲノム外来」から現在の主治医への報告

通常、検査の結果が出るまでに約3 - 6週間かかります。第2回の外来は約5 - 7週間後に受診が予約されます。

尚、「がんゲノム外来」は、疾患の診断や治療方針についての相談、セカンド・オピニオンには対応しません。また、がんパネル検査の結果を受けて、臨床試験、治験への参加を検討される場合も、院内の別の部門が対応し、新たに他の診療科外来を受診しなければならない場合もあります。

(4)費用

「がんゲノム外来」受診にともなう費用は以下のとおりです。

1) がんゲノム外来受診料

A. 自費診療 (2回分/10割負担):              20,000円(税別)
B. 健康保険診療:                   (定められた受診料)

2) 検査の実施に伴う費用

A. 自費診療(10割負担)
  a) ThermoFisher/illumina Focus+BRCA:      400,000円(税別)

  B. 健康保険診療7)
    7) 病状によっては検査を受けられない場合があります。
   a) シスメックス OncoguideTM
   b) 中外製薬 FoundationOne® (FoundationOne® Liauid 含む)

   (i) 検査実施時:                  132,000円(税別)(3割負担の場合)
   (ii)検査結果説明時:                  36,000円(税別)(3割負担の場合)

尚、使用する検体(サンプル)の状態や品質、量などの問題のため、解析が不可能な場合など、20,000円 ~ 50,000円(税別)8)の費用が発生することがあります。また、検査を受けたあとに、検査結果の提供を受けられない場合にも、検査費用は請求されます。

8)  検査のための解析が中断される段階や検査商品により額が異なります。スタッフにお尋ねください。

 

診療担当者の方々へ

上記しましたように、当院のがんパネル遺伝子検査のシステムでは、患者ご本人より当院にご連絡をいただき、コーディネーターが外来受診を調整します。「がんゲノム外来」への受診に際しましては、以下をご提供いただく必要があります。患者ご本人よりご依頼申し上げますので、がんパネル遺伝子検査実施の意義も含め、ご対応をお願い申し上げます。

A.診療情報提供書
B.病理組織診断報告書

書式は自由です。病理組織診断報告書はかならずご提供ください。以下の宛先まで郵送をお願い申し上げます。併せてFAX送信いただいても結構です。

〒811-1395 福岡市南区野多目3-1-1
国立病院機構九州がんセンター
がん相談支援センター内
がんゲノム受付(担当: 井上)
TEL: 092-541-3231(代表)
FAX: 092-541-3390

 

C.がん組織サンプル

がんゲノム外来の受診後、担当者よりご連絡をさし上げますので、ホルマリン固定パラフィン包埋組織標品ブロックより、以下の薄切未染色スライドをご提供ください。原則として、ブロックは受け付けられません。郵送されたり、受診の際に直接おもちいただかないようご注意ください。薄切の作成が難しい場合などは、下記担当者までご連絡ください。

すべて、病理組織診断に用いられたブロックの連続切片をご提供ください。原則として、腫瘍部分の断面積が25mm2程度以上のものとします。生検により採取されたものなど著しく断面積の小さなもの、組織の残量が少ない場合、などにつきましては、上記担当者までお問い合わせください。

a) 4μm薄切未染色スライド2枚9)
 9) がんパネル遺伝子検査では、データ処理上、腫瘍細胞含量値が必要となるため、解析に供された部分と同一の組織サンプル上でこれを評価する必要があります。

b) m薄切未染色スライド10枚もしくは10μm薄切未染色スライド5枚10)
 10) 検査商品により適した厚さが異なります。担当者より どちらかをご準備いただくかお伝えします 。


また、未だ外科的処置などが実施されていないものの、がん組織を採取可能な方法が想定される場合も、上記担当者までお問い合わせください。


以上、a)およびb)を、ガラスが割れないようケースなどに容れ、以下宛ご郵送ください。

 

〒811-1395 福岡市南区野多目3-1-1
国立病院機構九州がんセンター
がん相談支援センター内
がんゲノム受付(担当: 井上)
TEL: 092-541-3231(代表)

 

検査結果は、当院「がんゲノム外来」で患者ご本人にご説明しますが、以下を郵送の上、ご報告申し上げます。 

  1. 九がんゲノム医療システムがんパネル遺伝子解析報告書:
    検査結果の総合的に評価した結果を報告します。国内の健康保険診療、当院内の臨床試験課題、治験課題に対する適応もしくは参加の可能性の有無についても報告します。
  2. 各検査商品の検査結果報告書:
    検出された遺伝子変化のリスト
  3. 各検査商品の注釈レポート:
    欧米の薬剤の適応承認状況、国際臨床試験などの薬剤開発状況に関する情報等

 

尚、当院内の臨床試験課題、治験課題に対する参加の可能性が指摘されている場合でも、その後の検討により参加できないことが判明する場合もあります。報告書内容は、報告期日時点での可能性を検討した結果を記載しております。報告書内容につきご不明な点がございましたら、下記担当者までご遠慮なくお問い合わせください。

 

〒811-1395 福岡市南区野多目3-1-1
独立行政法人国立病院機構九州がんセンター
がんゲノム受付
がん相談支援センター内(担当: 井上)
TEL: 092-541-3231(代表)