良性骨軟部腫瘍の情報
一般に良性の骨・軟部腫瘍はゆっくりと増大し生命に影響を及ぼすことはありません。当科では良性腫瘍の手術も行っていますが、手術に至る理由としては痛みや麻痺、見た目、骨折予防などがあります。また、組織診断のために治療を兼ねて切除することもあります。
良性腫瘍で特に問題になるのは悪性腫瘍との見分けが付きにくい場合です。骨・軟部腫瘍には100以上の種類があり、画像だけでは診断がつかないことも多くあります。年齢、部位、経過なども考慮して良性か悪性かをある程度推測できますが確実ではありません。悩ましい場合には、定期的な画像検査で増大速度を把握したり生検を行ったりします。生検には針生検、切開生検、切除生検があります。順に患者さんの負担は増えますが、診断の確実性は上昇します。
良性軟部腫瘍の代表例は「脂肪腫」で、よく見られる腫瘍です。
治療について
良性骨腫瘍では、正常の骨が腫瘍に押されて弱くなり骨折することがあります。痛みはその前兆であることが多く、なるべく骨折する前に手術を行います。手術は自分の骨の形を残して腫瘍だけをかきだす掻爬(そうは)を行うことが一般的です。掻把した後の欠損に対しては主に人工骨の移植を行っていますが、骨が弱くなっている場合には金属で補強することもあります。「非骨化性線維腫」や「線維性骨異形成」のように自然と腫瘍が硬化し治療不要となるような腫瘍もあり経過観察も時には重要です。「類骨骨腫」はプロスタグランジンという物質を産生して痛みや炎症をひき起こす特殊な良性腫瘍で、手術により痛みが軽快します。
「脂肪腫」
無症状のことがほとんどですが、見た目が気になるなどの患者さんの希望で切除を行うことがあり、腫瘍のみを切除する「辺縁切除」を行います。良性・悪性に限らず一般的に軟部腫瘍は痛みを生じることはありませんが、神経に発生した腫瘍や血管系腫瘍は痛みの原因になることがあります。このような場合には痛みの改善を期待して手術を行います。