臨床試験を行う上でのルール
臨床試験は、「新たな治療法等」を人に使用することになるため、参加する患者さんの安全性と権利が最大限に守られなくてはなりません。
それを満たした上で「新たな治療法」の効果や副作用を科学的に調べることが必要になってきます。
そのため、「ヘルシンキ宣言」、「人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針」をはじめとする諸指針および関連する省令等の諸法令(臨床試験に参加する患者さんの安全性と権利を最大限に守るとともに、適正かつ円滑な臨床試験が実施できるように定められたルール)に則り実施されており、臨床試験の計画書等を倫理委員会に提出し、倫理的・科学的に問題がなかったものが「臨床試験」として開始されます。
よく寄せられる質問
Q1:治験と臨床試験の違いは何ですか?
A1:治験と臨床試験を対比させて答えると
治験は「薬の候補」や「医療機器の候補」を「薬」または「医療機器」として国に(厚生労働省)承認をもらうために、人での効果や安全性の情報を得るための試験です。
一方、臨床試験は主に承認された「薬」または「医療機器」を医療の現場でより有効かつ安全に使用していくための情報(薬の投与量や組み合わせ等)を得るための試験です。
また、治験と臨床試験では遵守しなければならないルールが異なります。ただし、どちらにも共通して言えるのは、参加する患者さんの安全性と権利が最大限に守られなければならいということです。
Q2:臨床試験中の費用はどうなっているのですか?
A2: 臨床試験対象部分の自己負担の内容は 1)負担なし、2)一般の診療と同様、3)全額負担(保険適応外のため10割負担)等と各臨床試験によって様々です。詳細は、参加する臨床 試験の担当医にお尋ねください。
Q3:臨床試験に参加するメリット、リスクは何ですか?
A3:「メリット」
- 試験期間中、通常の診療よりもきめ細かな検査や診察が行われ、専門的な診療を受けることができる場合があります。
- 新しい診断や治療が広く一般的に利用可能となる前に、それらを受けることができる可能性があります。
- 医学研究に寄与することで、科学的なエビデンス(根拠)に基づく医療(EBM)の確立に貢献し、将来同様の病気で悩んでいる他の人々の役に立つことができる可能性があります。
「リスク」
- 試験期間中に、不快な副作用、重大な副作用、場合によっては命に関わる副作用が起こるかもしれません。
- 参加しても効果がみられないこともあります。
- 臨床試験に参加することで、時間や手間が余分にかかることもあります。例えば、来院回数や検査回数が増える、入院が必要となる、薬の服用方法が複雑になる等のことが考えられます。
Q4:臨床試験には誰が参加できるのですか?
A4:臨床試験ごとにどのような人が参加できるのか基準を設けています。この基準を「選択/除外基準」といい、これに基づき参加できるか、できないかの判断が行われます。この基準は、年齢、性別、疾病のタイプや病期、これまでの治療歴、服用薬、その他の病状等をもとに決められています。
試験によっては、病気の人ではなく、健康な人を対象とするものもあります。
選択/除外基準は、適切な参加者を識別し、かつ参加者の安全性を確保するために用いられます。
Q5:臨床試験に安心して参加する仕組みはあるのですか?
A5:臨床試験は、国で定めた指針に従って実施する必要があり、その指針の規定により、臨床試験を実施しようとする場合は、医療機関において、実施しようとする試験が適切なものであるか、医療機関の倫理審査委員会の意見を聴いた上で判断されます。
一方、参加を考える人は、参加を決める前に十分な説明を受け、参加の可否を決めることができます。参加しない場合でも、不利益を受けることはありません。
また、試験の途中いつでも参加の中止を申し出ることができ、その場合も不当な扱いを受けることはありません。試験実施中に、試験への参加を続けるかどうかに影響するような新たな事実が分かった場合は、参加者にその情報が提供されます。
Q6:臨床試験における個人情報の取扱はどのようになっているのですか?
A6:「人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針」により、試験を行う医療機関の長は、臨床試験の成果を公表する場合には、個人を特定できないようにすることとされています。また、個人情報の漏えいを防止する等の安全管理措置を講じることも求められています。