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緩和ケアとは

更新日:2024年4月1日

緩和ケアとは

がんになると患者さんとそのご家族は、さまざまな苦痛、問題を抱えます。それは単に痛みといった身体的な症状だけでなく、不安や落ち込んだ気分などの精神的なつらさ、日々の生活で生じる社会経済的な問題、そしてスピリチュアルな問題(その人自身の人生の意味や生きる意味など)です。

緩和ケアとは、こうした身体的な苦痛や気持ちのつらさなどを少しでも和らげるための対処を早期から行い、患者さんとそのご家族も含めて援助することです。そして、生活の質あるいは生き方の質を保つことで、自分らしく過ごしていただくことを目的としています。

家族のケア

   

家族は、第二の患者と呼ばれます。家族の誰かが病気になると、これまでの生活が変化し、様々な問題が生じてきます。大切な家族が病気になったことでのショック、慣れない医療用語、意思決定のサポート、経済的な問題、介護疲れなど、患者さんのそばにいるご家族にも負担がかかってきます。先の見える状況であれば、そこを目指して頑張ろうという意欲もわきますが、がんの治療は長期に渡り、期間が長くなればなるほどご家族のしんどさも増します。

家族は、闘病を支えながら生活していかなくてはならず、患者さんと同じくらいの負担を抱えています。なかなか周囲の人には話せない、患者さん本人にも言いにくい、そんなことはありませんか?外来や病棟の医師、看護師も話を聞きますが、ゆっくりと話をしたい、愚痴を言いたい、何か心理的なサポートがほしい、どんなことでも構いません。ちょっと話をするだけでも、心が軽くなり余裕が生まれることもあります。気軽にお話に来てください。

子供のケア

30~40代の患者さんが増えており、その子どもも低年齢化しています。幼い子どもを持った親ががんになったとき、途方に暮れるのは当然のことであり、また子どもたちも何がなんだかわからずにいるのが現状です。

これまでの医療の中では、子どもは病気を知ったらかわいそうだとか理解できないのではないかという考えの下、子どもは病気の話し合いの輪の外に出されてきました。

子どもたちは、それぞれの年齢によって理解の仕方は異なり、表現方法もそれぞれですが、親を心配し何か自分にできることはないかと思う気持ちは必ず持っています。

それぞれの年齢、個性にあわせた病気の説明を行い、子どものできることを伝え、病気を抱えながらも親子として良い時間を持ってもらえるようにサポートする必要があります。その家族の形態にあわせた対応を考えたいと思います。

ご自身のことだけでも大変だと思いますので、子どものことで心配なことがあれば、どんなことでも構いませんので、ご相談ください。

リラクゼーション

眠れないときやイライラ感の強いとき、気分が落ち着かないときに利用可能です。痛みを緩和するための補助的な手段としても利用できます。以下に簡単な説明がありますが、一人で行うことが難しいときは、ご相談ください。

腰掛けた状態または横になり、楽な姿勢を取ります。ゆっくりと自分のペースで深呼吸「はいて~すって~一回、はいて~すって~二回・・・」10回までゆっくり数えたら、また1に戻って数えます。途中で数がわからなくなったときは、気にせず1から数えたらいいです。なんとなく気分がゆったりしてきたら終わります。一日に数回気がついたときに行いましょう。

1.準備

服装はゆったりできるもので、絞めているところがあれば緩めておきます。

2.姿勢

椅子に腰掛ける、深く腰掛けもたれかかる、仰向けに寝るなど

3.実施

軽く目を閉じ、何回か腹式呼吸をゆっくりと行い、からだの力が抜けていることを確かめます。ゆったりしてきたら、心の中で「気持ちが落ち着いている」と数回ゆっくりと繰り返します。気持ちが落ち着いていなくても構いません。とにかく「気持ちが落ち着いている」とだけ繰り返し心の中で唱えます。ぼんやりと感じることが大切です。ここで、おしまいにしても構いません。

もう少し取り組みたい人は、次に「手が重い、足が重い」と数回繰り返します。自然に重さを感じてきます。次は「手が暖かい、足が温かい」と数回繰り返します。じんわり温かくなってきます。

4.終わり方

少しぼんやりした状態なので、体を起こす動作が必要です。手足をぶらぶらさせたり、曲げ伸ばしをしたり、背伸びをしたり、体に力を入れます。ゆっくりと目を開けます。これを消去動作と呼びます。

そのまま眠ってしまったときも、起床時同じように消去動作をし、気をつけて起きてください。

呼吸法や自律訓練法で心がゆったりしている状態で行います。目を軽く閉じ、自分が一番落ち着くだろうという場所や状況のイメージをします。心地よい音楽を聴きながらでも構いません。ひと時、そのイメージに浸ります。気持ちが穏やかになってきたら終わりにします。

 

 

スピリチュアルケア

がんの全人的苦痛(トータルペイン)の中のひとつにスピリチュアルペインと呼ばれるものがあります。がんは治る時代になったといえども、やはり告知を受けたとき、死をイメージしてしまう人も多いと思います。

スピリチュアルは日本語で霊的・魂と訳しますが、その人自身の人生の意味や生きる意味などに相当します。

死を意識するような状況に直面したとき、人は「なぜ私がこんな病気にならなければいけなかったのか」「私の人生は何だったのだろうか」「こんなことなら早く死んでしまいたい、早く楽になりたい」「死んだらどうなってしまうのだろう、死後の世界はどんなだろう」など、普段は感じないような問いが頭を離れなくなることがあります。このような答えのでない問いをスピリチュアルペインと呼びます。

そんなときは、自分が一番話しやすい人に話をすることが大切です。身内にはなかなか心配させたくないので言えない、周りに話せる人がいない、そんなときは気軽にご相談ください。丁寧に話を聴き、ひとつひとつ気持ちの整理ができるようにお手伝いします。

遺族ケア

大切な家族を亡くしたときの悲しみは、非常に深いものであり、一時的に精神的な混乱が生じるのも当然です。配偶者をなくすことは、ストレスレベルで一番高いといわれています。

1~2ヶ月の間、落ち込んだ気分、抑うつ感や無気力、自然に涙が出るなどの反応があるのは自然なことではありますが、それ以上に続くときやあまりに辛くて生活が成り立たなくなってしまったとき、そのときは専門家の力を借りることも大切です。

サイコオンコロジー科の外来にて対応させていただきます。また、患者さんが亡くなった後、病院に行くのも辛いという方もおられますし、遠方からでなかなか来院できない方もおられます。そのときは電話でお問い合わせていただければ近くの専門機関をご紹介することもできます。