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令和5年5月27日に発生した一酸化炭素中毒事故の事故発生要因についてご報告(最終報告)

2024年01月31日

 令和5年5月27日(土)午前、院内の栄養管理部門洗浄室内で、食器洗浄中に一酸化炭素が発生し、栄養管理部門で働く委託職員と病院職員が中毒となる事故が発生いたしました。

被災された職員及びご家族の皆様に、心よりお詫び申し上げます。幸いにも被災した皆様全員が回復されておりますことに、心より安堵しております。
また、患者の皆様、地域の皆様並びに消防機関、警察機関、その他行政機関には、ご心配とご迷惑をおかけしましたことをお詫び申し上げます。

事故発生から時間を要しましたが、院内調査や行政機関等の調査を経て、今般、事故発生要因が判明しましたのでご報告いたします。
事故に至った全ての要因においては、委託した業務に対する病院の関与・管理が不十分でした。
調査の結果、判明した事故発生の主な要因は、「(1)ガス式食器洗浄機の不完全燃焼による一酸化炭素の発生、(2)警報に対する対応遅延による一酸化炭素の吸い込み、(3)排気設備の停止による洗浄室での一酸化炭素の充満」であると考えています。
今後このようなことがないよう、行政機関等の指導等を踏まえ、事故防止に一層努めてまいります。

現在、被災した皆様から体調不良を訴えるような情報はございませんが、何らかの症状があれば当院へ相談するようにお願いしており、引続き誠実に対応したいと考えています。

改めて、皆様方に多大なご迷惑をおかけしましたことを深くお詫びするとともに、引き続き、安全・安心な医療を提供するよう努めてまいります。

 

院長 藤 也寸志

 

一酸化炭素中毒事故の概要

 

1 概要

事故発生日

事故発生場所

被災者

事故の内容

令和5年5月27日(土)

九州がんセンター 2階 洗浄室

26名(栄養管理部門業務委託職員23名、病院職員3名)

食器洗浄中における一酸化炭素発生による事故被災

 

2 経緯

令和5年5月27日の午前9時40分頃、洗浄室内にて食器洗浄作業中の栄養管理部門の業務委託職員4名が体調不良を訴え、そのほか、救護などに当たった業務委託職員5名が体調不良となり、当院で応急救護を行いました。救護の結果、いずれの職員も一酸化炭素中毒として診断され、市内の救急病院4施設へ救急搬送となりました。救急搬送された職員9名のうち、4名は即日退院、6月5日までに全員が退院となりました。

また、救急搬送された9名のほかに、栄養管理部門で作業していた職員17名(業務委託職員14名、病院職員3名)についても、5月27日から29日の間、当院に入院して経過観察を行いました。その後、被災者26名全員に対して、7月下旬まで当院医師により健康確認を実施し被災者の回復を確認しています。

患者給食は、事故当日の昼食から5月28日夕食までは非常食を提供、5月29日から6月5日までは院外から給食を調達し提供をしました。調理室と洗浄室は別の区域に分かれており、調理室は一酸化炭素の大量発生やガスが充満することはありませんでしたが、安全確認のため、調理室内の調理機械と作業環境等について緊急でメーカーによる点検を行い、安全確認がとれた6月6日より院内調理による給食を再開しています。

その後、事故当日から消防・警察・労働基準監督署・その他関係機関の調査、職員・業務委託職員(栄養管理部門)・点検委託業者(法定電気設備点検)・関連業者への聞き取り調査、機器メーカーの現状調査確認などの院内調査や報告等の対応を行ってきました。

 

3 一酸化炭素中毒に至った要因

[事故発生に至った具体的な要因]

(1)ガス式食器洗浄機の不完全燃焼による一酸化炭素の発生

事故後の食器洗浄機の状態を調査したところ、機器内部のガスブースター内にスケール(カルキによる水垢)が付着し堆積したため、熱交換不良となり熱交換器の異常加熱により一部が破損していました。水漏れによりガスバーナーの燃焼部に水滴がかかることで、不完全燃焼となり一酸化炭素発生につながったと推測しています。

スケールが付着する等の食器洗浄機が不調を来した原因は、食器洗浄機のメンテナンスが不足していたことと判断しています。スケールの除去は、日常点検として栄養管理部門の業務委託職員が1ヶ月に1回程度行うこととなっておりましたが、十分に実施できておりませんでした。

 

(2)警報に対する対応遅延による一酸化炭素の吸い込み

調査の結果、事故当日、7時10分頃から食器洗浄機を稼働開始し、9時20分頃に(一酸化炭素)警報器が発報したことが判明しています。その後、警報は鳴り続けていましたが、洗浄室内の業務委託職員は食器洗浄機を停止し避難するなどの安全行動を行わず、作業していた業務委託職員と救護に向かった他の業務委託職員が一酸化炭素を吸い込み、一酸化炭素中毒に被災しました。

警報の発報に対して安全行動が遅れた原因は、警報音が大きい、警報の危険性の認知が乏しく過去にも持ち出したこともあるという理由で、当日も業務委託職員が警報器を洗浄室外に持ち出しており、洗浄室内で作業している業務委託職員は一酸化炭素が洗浄室に充満している危険な状態であることを認知できませんでした。他の業務委託職員は洗浄室内の気分不良者を発見し救護に向かいましたが、警報を確認できない状況で洗浄室内に入ったため被災することとなりました。

警報器の発報履歴を解析したところ、事故以前においても警報器が頻回に発報していたことが判明しました。過去、警報器が発報した際も、業務委託職員は安全行動を行わずに警報器を持ち出すことがあり、一酸化炭素に対する危険認識が希薄であったことが背景にあると考えています。

事故以前に警報器が頻回に発報していた原因について、修理記録や職員への聞き取りなどかなりの時間をかけて調査を行いましたが、発報時の状況を再現することはできないこともあり、原因は判明しませんでした。

 

(3)排気設備の停止による洗浄室での一酸化炭素の充満

事故当日は、建物全体の電気設備について法定点検を実施していました。洗浄室の排気を止めないよう機器を操作する手順となっておりましたが、点検を行う点検委託業者が作業手順(スイッチの切り替え)を誤ったため手順通りに実施されず、点検中に洗浄室の排気が停止しました。この排気停止が契機となり、(1)により発生した一酸化炭素が洗浄室内に充満しました。

 

[当院の委託責任]

委託した業務に対する責任として、委託業務の履行確認、機器設備の善良なる管理、必要な教育研修、安全な業務環境の確保を行うべきところ、その関与・管理が不十分な結果、事故の要因を発生させたものであり、十分に行われていれば、事故防止の可能性もあるものと考えています。

一酸化炭素の発生は、業務仕様書に定められた機器のメンテナンスの履行確認が不十分であったためと考えています。また、警報器については、委託職員に対し行う教育や一酸化炭素に対する危険性などの情報提供が不十分であったため、警報器発報に対する危険性の認知が希薄であったものです。

排気設備が停止したことは、点検委託業者が実施する電気の切り換えなどの業務履行、安全な作業を行うために必要な安全対策などについて、当院が確認すべきところが十分に確認できていませんでした。

 

4 安全対策 

今後このようなことがないように病院の管理体制を強化するとともに、病院の責任の下に以下の安全対策を講じてまいります。

 

(1)食器洗浄機のメンテナンス内容を強化

  • 本件発生後、栄養管理部門内にある都市ガスを使用する機器全てについて、製造会社による緊急点検を行い、調理洗浄の作業環境の安全が確認されるまで業務を停止し、安全確認を終えた調理部門から運営を再開しました。今回、食器洗浄機を新しく購入し、11月7日から食器洗浄業務を再開しています。福岡中央労働基準監督署の指導の下、栄養管理部門の業務委託業者による日常点検とスケール除去定期作業の徹底をすることで、食器洗浄機のメンテナンスを強化するとともにメーカーによる定期点検を導入することとしました。
  • 排気機能について、より安全性を高めるために食器洗浄機の上部に排気フードを拡張し、洗浄室の作業環境を見直しました。

 

(2)職員に対する教育・研修の徹底

  • 福岡中央労働基準監督署の指導の下、以下の対策を講じました。
  • 警報発報時の対応手順を明確にしました。発報時に迅速な対応ができるように、洗浄室内にある警報器注意事項の掲示内容、掲示方法を見直しました。
  • 栄養管理部門の全ての職員に対し、一酸化炭素等の危険性、警報発報時の適切な対応、使用する調理器具や洗浄器具、ガス各種警報器についての使用方法、点検項目等の研修を実施しました。今後も作業環境の安全管理について、職員の教育研修に努めます。

 

(3)電気設備の法定点検作業手順に係る安全確認の徹底

  • 電気設備の法定点検における事前準備、役割分担、安全確認手順等を見直し、設備の誤操作を防ぐため、動力盤など機器に予めマーキングを貼付し、安全確認の徹底に努めています。

 

(4)その他

  • 当院の安全衛生委員会の定期巡回において、栄養管理部門の作業環境の安全管理が保てているか、これまで以上に、設備の排気状況や機器のメンテナンス、職員の認識などを重点的に確認、指導を行うこととしました。

 

以 上