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第8回九州がんセンター市民公開講座の質問回答を掲載しました

2018年11月15日

 

平成30年9月29日(土)の市民公開講座は終了致しました。
講座に参加して頂いた皆さん、質問して頂いた皆さんありがとうございました。
頂いた質問に対して回答を掲載しております。

 


 
30年度(平成30年9月29日開催) 市民公開講座
「高齢者のがん医療」
質問への回答

 

【高齢者のがん医療の現状と課題(泌尿器科医師 根岸孝仁)】

・何歳からが「高齢者」ですか?
日本老年学会・日本老年医学会という組織が75歳から89歳を「高齢者」、90歳以上を「長高齢者」と定義しています。しかし同じ暦年齢の人でも体の状態はそれぞれ異なりますので、治療法などを決定する際は年齢に加えてその方の持病や全身の状態などを加味して個別に検討する必要があります。

 高齢のがん患者さんはがん患者さん全体の何割くらいですか?
2017年に九州がんセンターを初めて受診された患者さんのうち19.1%が75歳以上の患者さんでした。その割合は年々増加しています。

 

【高齢者のがん手術(肝胆膵外科医長 杉町圭史)】

・年をとってかかった癌は進行が遅いと聞いたことがありますけど、高齢になってかかった癌ならば手術しなくてもある程度長生きできるということはありませんか?
患者さんや一般に、「高齢者のがんは進行が遅い。」と思っておられる方が多くいます。確かに、比較的悪性度が低く非常にゆっくりと進行するがんは大きくなるまでに時間がかかり、高齢になって初めて発見されることもあります。一方で、年を経るに従ってがんの原因となる遺伝子の異常が増え、高齢者が進行の早い悪性度が高いがんに罹ることも決して珍しくはありません。このように一律に「高齢者のがんであるから進行が遅い。」と判断することは正しくありません。個々の患者さんやそれぞれのがんのタイプについて進行の早さを判断して治療方針を決める必要があります。

・手術をすると頭が呆けたり、寝たきりになったりしませんか?
手術・入院・麻酔・痛みなどのストレスが原因となり、意識障害が起こって頭が混乱した状態になることがあります。これは高齢患者さんに多く見られる「せん妄」という状態です。よく見られるのが幻覚やつじつまの合わない言動、日付や場所がわからなくなるといった症状です。高齢患者さんが手術の後にせん妄状態になることは時々あります。しかし、せん妄の症状は手術からの回復とともに数日~数週間といった比較的短期間で回復し、認知症とは異なります。ですから手術をすると認知症となりやすいというわけではありません。

・高齢になっても手術の後の痛みに耐えられますか?
手術の傷によって程度の差はありますが、痛みを必ず感じます。痛みがあれば何より患者さんによって苦痛ですし、また痛みが強いと手術後の回復に悪影響を及ぼしたりせん妄の原因になったりします。そのため今は、手術の後の痛みに対しては我慢をしてもらうのではなく、積極的に医学的に対処してできるだけ痛みや苦痛が少なくなるようにしています。痛みをとる具体的な方法には、飲み薬・注射薬・背中から入れる硬膜外麻酔などがあります。また、高齢の患者さんが特に痛みが強いということはなく、むしろ筋力が強い若い患者さんの方が痛みを強く感じることもあります。痛みに対して十分に対処をすることで、高齢であっても手術の後の痛みに耐えることができます。

 

【抗がん薬治療(血液内科医長 崔日承)】

・免疫療法にはいくつも種類があると聞きますが、がんセンターで可能な免疫療法は何ですか?
現時点で、効果が科学的に証明されていて病院で受けることのできる免疫療法は、「免疫チェックポイント阻害薬」という免疫療法のみです。この治療は九州がんセンターでも受けることができます。ただし、がんの種類によって使用できるがんと使用できないがんがありますので、担当の先生とご相談ください。

・自宅で受けることができる抗がん薬治療はありますか?
がんの種類や病状によって、飲み薬の抗がん薬による治療が選択される場合があります。毎日飲むお薬であれば、自宅で治療を継続していただくことになります。

・抗がん薬の治療で、治療を受ける前より状態が悪くなることがありますか?
抗がん薬の副作用が強く出た場合などは、治療を受ける前より状態が悪くなる場合もあり得ます。しかし、副作用に対しては当たり前ですが適切な対処を行います。また、抗がん薬の効果がなく病気が進行した場合も状態が悪くなることが考えられます。

 

【元気で長生きをするために(がん看護専門看護師/副看護師長 野口久美子)】

・親(患者)にあまり悪い話をすると落ち込むのではないかと心配です。どのように伝えると良いですか?
本人が病気の話を聞きたいかどうかが大事です。何の病気でどこに病気があるのかなど、病状をある程度本人に理解してもらうことで、患者さんが納得して治療を受けることにつながります。まずは、お父さんまたはお母さんにどんなことが心配なのか、病気のことでどんなことを知りたいと思っているのかを尋ねてみてください。知りたいことに合わせて、病気に関することを話してみましょう。

・家族に運動や仕事をしたら危ないと言われます。何と言ったらいいですか?
運動など体を動かすことは健康を保つために大切です。がんになったからと生活の制限はせずに、無理はしない程度で運動や仕事をすることをお勧めします。ご家族には、病院から運動を勧められていることを伝えてください。それでも心配する場合には、外来受診時などに一緒に来てもらい、主治医から説明してもらうとご家族が安心されると思います。ただし、骨に転移がある場合や神経症状がある場合には、運動や仕事に制限が生じることがありますので、運動や仕事に制限が必要な病状かどうかを主治医にお尋ねください。

 

【いつまでも自分らしく過ごすために (臨床心理士 白石恵子)】

・好きなことをしてもらいたいけど、特に何もなさそうです。何か家族としてできることはありますか?
何か特別なことをすることだけが好きなことではないのではないでしょうか。家でのんびりテレビをみる、近所を散歩するなど、普段の生活こそがその方らしいということもあります。ご家族には、日頃から気にかけているよと声をかけていただければと思います。

・事前に話し合いをする大切さはわかりますが、なかなか話を切り出しにくいです。良い方法はありますか?
体調が悪くなった時にあらためて面と向かって話し合いをするスタイルは、お互いにぎこちなくなる可能性も高いですね。普段の生活の中から、その人の大切にしていること、嫌なことなどを知るためにコミュニケーションをとっておきましょう。日頃の会話の中に今後どのように過ごしたいのかなどを知るヒントがあります。

 

【これも大事 医療費のお話(医療ソーシャルワーカー 安藤真紀)】

・医療ソーシャルワーカーはどの病院にもいますか。相談したいときには病院のどこに行けばいいですか。
近年、医療ソーシャルワーカーがいる病院が多くなっています。
ソーシャルワーカーがいる部署やその名称は病院によってそれぞれですが、「患者家族総合支援センター」、「医療福祉相談室」、「地域医療連携室」に配置されていることが多いように思います。九州がんセンターのようながん診療連携拠点病院には必ず「がん相談支援センター」があり、そこに医療ソーシャルワーカーがいることが多いです。がん診療連携拠点のがん相談支援センターは、その病院にかかっていなくても相談、利用することができますので是非ご活用下さい。

・入院までに限度額適用認定証の手続きができない時はどうなりますか。入院までに手続きをした方がいいですか。
「入院が急に決まって、手続きができそうにない。」というご相談を受けることがあります。入院することがわかったら、なるべく早めに保険証をもらった窓口へ限度額適用認定証の申請をされるようご案内します。
病院の会計窓口や医療ソーシャルワーカーへ相談されておくと、ご不安が軽減できる方法を一緒に考えることができる場合もありますので、まずはご相談下さい。