膵のう胞性腫瘍このページを印刷する - 膵のう胞性腫瘍

疾患名

膵嚢胞性腫瘍

疾患の説明

膵嚢胞(のうほう)とは、膵臓にできる内部に液体が溜まったふくろ状の形態をとる病変の総称です。
代表的な膵嚢胞性腫瘍にはこのようなものがあります。
  • 膵管内乳頭粘液性腫瘍(Intraductal papillary mucinous neoplasm: IPMN)
  • 漿液性嚢胞腫瘍(Serous cystic neoplasm: SCN)
  • 粘液性嚢胞腫瘍(Mucinous cystic neoplasm: MCN)
  • 充実性偽乳頭腫瘍(Solid pseudopapillary neoplasm:SPN)
IPMNは最も高頻度にみられる膵嚢胞性腫瘍です。腫瘍が存在する部位によって「主膵管型」と「分枝膵管型」、その両者が混在した「混合型」に分けられます。通常は腺腫という良性の腫瘍ですが、一部の患者さんでは時間経過とともに段階的に悪性化(がん化)することがあります。また、膵癌診療ガイドラインでも膵癌発症のリスクファクターとしても挙げられており、下記に示すような検査での良悪性の鑑別や経過観察が必要となります。
上記のうち、SCNは悪性化の可能性が極めて低いとされています。
一方でMCNやSPNはそのほとんどが女性に発生し、がん化する危険が5-30%程あるとされています。
膵嚢胞性腫瘍の検査、診断、治療方針の決定、手術には、専門的な知識、技術が必要です。「膵嚢胞」「IPMN」が疑われたら、治療経験が豊富な専門施設を受診することをお勧めします。

検査

膵嚢胞性腫瘍の疑いがある場合、以下のような複数の画像検査、内視鏡的検査を併せて行い、総合的に判断し治療方針を決めます。

MRCP(MR胆管膵管撮影)検査・造影MRI検査

IPMN MRCP画像

MRCP検査は特に膵管や胆管を強調して描出することが可能で、IPMNの経過観察にもっともよく用いられる検査です。造影MRI検査では悪性を疑う結節など嚢胞性腫瘍の性状について詳しく描出することができます。

造影CT検査

IPMN CT画像

multi-detector CT(MD-CT)の発達により、数mm単位で膵臓の微細な構造まで検出できるようになりました。造影剤を注射して撮影するCT検査(dynamic CT)では、膵腫瘍の大きさや周囲の血管との関係、悪性を疑う結節の有無などを調べることができます。

超音波内視鏡検査(EUS)

IPMN EUS画像

胃カメラと同じ要領で、口から内視鏡(スコープ)を挿入します。スコープの先端に超音波装置が装備されており、胃や十二指腸の壁を通して膵臓、胆管に異常がないか超音波で検査を行います。嚢胞内部の詳細な観察やわずかな変化を捉えることができ、膵嚢胞性腫瘍の質的診断、良悪性鑑別に欠くことのできない重要な検査です。症例によっては超音波内視鏡下穿刺吸引法(EUS-FNA)で腫瘍組織の一部を採取したり、内容物を吸引したりすることも可能です。通常、鎮静をかけて行います。

治療

膵嚢胞性腫瘍のうち、悪性のリスクがある腫瘍(MCN、SPN)の場合には膵切除手術による摘出が推奨されます。IPMNの場合、主膵管径が10mmを超える主膵管型IPMNは悪性の可能性、もしくは将来的に悪性化する可能性が高いといわれており、膵切除手術の対象になります。一方、分枝膵管型IPMNの大部分はすぐには治療が必要のない良性の病変です。悪性の所見がなければすぐには治療をせずに経過観察を行うことになります。経過観察の頻度は嚢胞性腫瘍の大きさにより異なります。分枝膵管型でも主膵管の高度拡張や嚢胞内の結節(壁在結節)などの悪性が疑われるサインがある場合に膵切除手術が考慮されます。
膵嚢胞性腫瘍に対する手術適応は、嚢胞性腫瘍の性質(悪性のサインあるいは悪性化の危険の有無)、嚢胞による症状の有無、患者さんの体力・年齢・全身の状態などを総合的に評価して決定します。手術の方法も病変の発生場所や大きさにより異なります。嚢胞性腫瘍は低悪性度のことが多く、低侵襲手術(腹腔鏡手術やロボット支援下手術)、さらに脾臓温存や膵中央切除などの機能温存手術の適応となることも多いです。当院は低侵襲膵切除手術の認定施設であり、このような低侵襲手術を積極的に行っています。周囲への浸潤、リンパ節や遠隔臓器への転移を疑う病変の場合には、「通常型の膵癌」と同様に、リンパ節郭清を含めた開腹膵切除術もしくは化学療法が必要になります。

当院で担当している診療科

ガイドラインの紹介

  • エビデンスに基づくIPMN国際診療ガイドライン2024年(医学書院)
  • 膵癌取り扱い規約第8版(金原出版株式会社)
  • 膵癌診療ガイドライン2022年版(金原出版株式会社)